慌てて前を向くと、いつの間にか西丘君があたしの前まで来ていた。


「お、おはよ……」


ドキドキ……と胸の鼓動が速くなる。


「な、聞いた?
今日、修学旅行の班決めするらしいよ」

「班決め?」


あたし達の学校では二年生の夏休み前に修学旅行がある。

最近はみんなその話題で持ち切りだった。


「何で決めるのかな……」


自由かな?

……いや、あの担任じゃそれはないか。


「くじ引きだって誰かが言ってたよ。
森セン、くじ引き大好きだし」


森セン=森先生

あたし達の担任の先生。

くじ引き好きで有名なんだ。


「じゃあ、朱音と同じ班になれるように祈っとかなきゃ」

「うん。
あたしも真央と同じになれるように祈っとく」


真央と同じ班だったら絶対楽しいから。


「二人、本当に仲良いよな」


西丘君があたし達を見て笑みを見せる。


「西丘は?
誰となりたいとかないの?」

「俺?
……俺は……」


……その時、西丘君がチラッとあたしの方を見た。

不思議に思ったあたしが首を傾げると、西丘君は慌てて視線をそらした。


「そ、そうだな~……俺は誰でもいいかな~。
ははっ……」

「ふ~ん……」


真央は何か納得いかなそうに西丘君を見た。


「じゃ、じゃあ、またあとで……」


西丘君はそんな真央の視線から逃れるように、急いでこの場から去っていった。