バスの中に入ると、すでに他の四人は座席に座っていた。
「西丘、アンタはそこね」
そう瀬山に言われたのは、耀とナベの前の席。
俺は奥に詰めて窓際の席の方に座った。
「拓海、桐生は?」
耀に後ろから話しかけられた。
「桐生?そろそろ来るんじゃない?」
そういえば、桐生の席は……
俺の二つ後ろの席には瀬山と速水が。
一つ後ろには耀とナベが。
……ということは……?
俺は空いている隣の席を見た。
え……ここ?
俺の隣……!?
「朱音ー、こっちこっち!」
バスに乗り込んだ桐生を瀬山が呼ぶ。
何も気にせずに桐生は俺達が座っている方へと歩み寄ってくる。
そして……
「朱音、西丘の隣ね」
「えっ……!?」
桐生は驚いたように俺の方を見た。
「もうそこしか空いてないのよ~。
ごめんね」
……その時、俺は気がついた。
そうか……だから瀬山はわざわざ耀を引っ張って早目にバスに乗るようにしたのか。
俺達を隣に座らせるために……!
なんという策士……!
俺が心の中でブツブツ呟いていると、スッと桐生が俺の席の横に立った。
「あの……西丘君……」
名前を呼ばれてドキッと反応する。
「隣……いい?」
少し遠慮がちにそう聞いてきた桐生。
俺は慌てて大きく頷いた。
「も、もちろん!」
俺がそう言うと、桐生は小さく微笑みながら静かに俺の隣に腰を下ろした。
……もちろん、俺の心臓はバクバクで……もうどうしようもなかった。

