拓海side

バスが停まってるところまで行くと、みんなが順番にバスに乗り込んでるところだった。

俺は惜しみながらも、さりげなくスルッと桐生の手を離した……。


平然と装ってるけど……結構心臓がヤバい。


手……繋いじゃったよ……。


……って、こんなんで緊張するって……俺は中学生か!!

今時の中学生だってこれぐらいサラッとこなすぞ!!


でも……温かかったな……。


俺がわずかに左手に残っている温もりを感じていると、誰かに頭を小突かれた。


「おい、変態」

「痛っ……って、誰が変態だよ」


振り返ると、森センがニヤニヤしながら立っていた。


「自分の左手を見てニヤついてるヤツのどこをどうみたら変態じゃないって言えるんだ?」

「えっ!?」


俺……ニヤついてた!?


俺が慌てて自分の顔を触ると、森センはそんな俺を見て笑い始めた。


「分かりやすいな、お前」

「なっ……!!」

「早く乗れ~」


何なんだよ……まったく。


ふと後ろを見ると、桐生はクラスメートの女子と楽しそうに話していた。


さっきまでは俺の左手に……

って!!

こんなこと考えてるから変態呼ばわりされるんだよ。


俺は頭を大きく横に振り、ゆっくりとバスの中へと足を踏み入れた。