駅の出口まで着くと、バスが何台か停まっているのが見えた。

どうやらここからクラスごとに分かれてバスに乗るみたい。


「俺らはどれかな……」


西丘君が少し背伸びをして周りを見渡す。


「あ、あっちに見覚えのある奴らが……。
桐生、行こ」

「う、うん……」


そっと自分の右手に視線を落とすと……あたしの右手はしっかり西丘君に握られたままだった。


嬉しい……けど、胸がドキドキして大変なことになってる。

離してほしくない……でも、このままだと心臓が持たない。


「桐生?」


あたしの様子に気がついた西丘君が不思議そうにあたしを見た。

そしてそのままあたしの視線の先にあるものを見て……


「あっ……ご、ごめん!」


慌てて手を離した……。


突然温もりを失った右手は冬でもないのになぜか寂しく冷たくなった気がした……。


「ごめん、俺走るのに夢中で……」

「ううん、そんな……気にしないで」


謝られたら逆にちょっとヘコむから……。


「その……別に嫌じゃなかったから……」

「……え?」


西丘君が驚いたようにあたしを見た。

そんな西丘君を見て、あたしも自分の発してしまった言葉に気づいた。


「え、あ、違っ……いや、違くはないんだけど……」


もう!何言ってるの!!

は、恥ずかしい……


「……じゃあ……」


西丘君がもう一度あたしの右手を優しく握った。


「え……」


突然のことにビックリして頭がついていかないあたし。


「みんなのところまで……もう一回、いい?」


ほんのり頬を赤く染めながら西丘君がそう聞いてきた。

あたしはもう言葉すら出なくて……小さくゆっくり頷いた。


すると、西丘君は優しく微笑んで……あたしの手を引いて歩きだした。