「せ、瀬山……」


俺は慌てて瀬山の横を見た。


「朱音ならいないわよ」


その言葉にホッとした俺。

でも、瀬山の視線はどこまでも冷たかった。


「今のって……独り言?」

「……みたいな感じです」

「……ものすごく危ない人だったわよ」

「……すみません」

「西丘って普通にしてれば爽やかでいい感じなのに、なんか残念よね」

「残念!?」

「本当、ウチの班って個性的なのばっかりだわ」


えっ……俺も個性的!?

ナベと速水と同じ種族!?

それはちょっと……


「それで?
朱音のことは誘えたの?」

「え!?」

「今の独り言ってそのことなんじゃないの?」


……大正解です。


「……まだ」

「はぁ?
さっさと誘いなさいよ」

「わ、分かってるって……」


分かってるんだけどな……。

あー……!!

もっとこう……サラッと言えないものかね……。


すると、そんな俺を見ていた瀬山がニヤッと笑いながら口を開いた。


「良いこと教えてあげる」

「良いこと?」


瀬山はゆっくり頷いた。


「修学旅行の二日目、朱音の誕生日なの」

「え……」

「そこで男を魅せるっていうのもアリかもね」


瀬山はそう言ってニヤニヤ笑いながら去っていった……。