「も、森セン……」


俺は慌てて桐生から視線をそらす。


今……俺、何て言おうとした?


ヤバい……顔が尋常じゃないぐらいに熱い……。


チラッと桐生の方を見ると、桐生も顔を赤くしてうつ向いていた。


「……あ?
何でお前らそんなに真っ赤なんだ?」

「「えっ!?」」


も、森セン……そこには突っ込まないで……


「そ、それは、その……な?」

「う、うん!
その……ね?」


……いかにも怪しげな俺達の態度を見て、森センはしばらく不審そうな目をしながらこっちを見ていた。


「あ……そうか」


そしてしばらくすると、指をパチン!と鳴らしてニヤニヤしながら俺達を見た。


「さてはお前ら……ここでいかがわしいことでもしてたんだろー」

「「は!?」」


い、い、いかがわしいことって……


「あー、ヤダヤダ。
これだから近頃の若いモンは……」

「す、するわけないじゃないっすか!
こんな汚い部屋で……」

「んだと!?
俺の部屋のどこが汚いっていうんだよ!」

「どこからどう見ても汚いでしょうが!」


ってか、俺の部屋って……。


「ていうか、お前……。
汚くなかったらこの部屋でいかがわしいことしてたのか?」

「えっ……!?」

「さっきのってそういう意味だよな?
おーい、桐生。
お前、危ないぞ。すぐさま逃げろ」


イスに座ってた桐生に立つように促し、ドアの方に追いやる森セン。


「ちょっ……危なくないから!」


そう言いながら、俺は無我夢中で桐生の手を掴んだ。


「あ……」


触れ合った手と手……。

俺よりも小さな……綺麗な手。

少し冷静になり、自分のしてることを理解すると……俺の体温はみるみる上昇していくようだった。


「あ……いや……ご、ごめん!」

「う、ううん……」


桐生の顔を……直視できない……。

俺達はお互いに顔を真っ赤にしたまま、固まっていた。


「青春だねぇ」


森センはそんな俺達を見ながら、小さな声で呟いた――