あたしは滅多に行くことのない数学準備室。

校舎の片隅にあるその教室は森センの居住地とも言われている。

本当に住んでるわけではないと思うけど……。

確実に家にいるより数学準備室にいる時間の方が長いらしい。


誰情報か分かんないけど……。


「あ……ここだ」


数学準備室、と書かれた教室を見つけて小さく息を吐く。

……早めに終わらせてさっさと帰ろう。

そう思いながらあたしは教室の扉を開けた。


……すると。


「……あれ、桐生?」


既に中にいた人があたしを見て驚いたように声を出した。

確かに森センはもう一人いるって言ってたけど……

予想外の人物にあたしの頭はパニック状態だった。


「に……西丘君!」