朱音side

ある日のこと。

朝、あたしが廊下を歩いていたときのことだった。


「桐生」


聞き覚えのある……できれば聞きたくなかった声に呼び止められた。

……ゆっくり振り返って顔を少し上げれば、予想通りの人物が立っていた。


「……何ですか?」


あたしがそう聞けば、目の前の人物はニヤリと口角を上げた。


「お前は本当にラッキーな奴だな。
ちょうどいいところに通りかかりやがって」

「……はい?」


……この人は何を言ってるのだろう。


あたしが不審そうな目で目の前の人……森センを見ると、森センは怪しげに笑った。


「今日の放課後、俺のところに来い。
ラッキーなお前に特別な任務を与えようじゃないか」


……それってつまり……


「……雑用……」