「それで、結局ニッシーはどこ行きたいの?」

「そうだ。
まだ拓海んの行きたいとこ聞いてなかったな」


拓海んって……。

ナベに言われると何か……鳥肌が立つ。


「俺は……」


行きたい場所なんて……特にはない。

ただ、一緒にいたかった人と一緒に行けるだけで……それでいい。


「……俺も清水寺」

「拓海んも恋占いの石目当て!?」

「ニッシー、乙女チックだね!」

「ち、違うから!
お……俺はただ日本の歴史を学びたいだけで……」

「拓海、日本史嫌いだって言ってなかったか?」

「耀!!」


耀は焦る俺を見て笑いを堪えきれずにいた。

助け船出してよ……。


「オトメン、ニッシー!!」

「拓海ん、乙女チックー!!」


そして、この二人をどうにかしてください……。


俺は少し困りながら視線を移した。

その時……

ニヤニヤする瀬山の横で……桐生がふわりと優しく俺に微笑みかけてくれた。


その瞬間……高鳴る俺の胸。

ドクンドクン……と速くなる心臓の音。


もう周りの騒がしさなんてどうでもよくなるぐらい……俺の心は完全に桐生に捕らわれていた――