二人ぼっち


(あー…気持ち悪い!)
家に着き、パソコンと冷房の電源を入れる。

パソコンをすぐにやろうと思っていたけど、汗が気持ち悪すぎてムカムカする。先にシャワーを浴びてサッパリする事にしよう…。シャワーを浴び終わったら、パソコンも起動し終わるし、冷房も効いて涼しくなるだろう。


 そう決めてすぐにタンスの中からTシャツ・短パン・下着を取り出し。浴室に向かった。ゆっくり入ると、その間にkenからチャットの会話が送られてくるかもしれない。
返事が遅れてしまうかもしれないと考えていたら、知らない間にサッとシャワーを済ませ、パソコンの元へと走っていた。



 一分… 十分… 一時間…
部屋の壁に掛けてある時計の秒針が、一秒一秒を正確に刻んでゆく。それなのにkenからの会話はない。
遂には深夜の1時を過ぎてしまった。どんなに遅くても、21時にはチャット部屋に来るのに…


 ただ単に、今日は寝てしまっただけかもしれない。
何時も以上にバイトをしていた。大学での実験が長引いてしまった。この頃、あまり休めなかった。
チャットより優先しているものや、チャットが出来ない理由なんて、いくらでもある。寝る事を私に伝えられなかったぐらい疲れていたんだ…


 けれど考えてしまうんだ… 本当は無いと言い切れる、最悪の事態を…考えてしまうんだ。
事件に巻き込まれたんじゃないか。事故に遭ってしまったんじゃないか。私を嫌ってしまったんじゃないか…
いや、私以外の人に興味を持ったんじゃないか。…死んでしまったんじゃ…
 みんなには経験がないだろうか。大切な人と当たり前のようにチャットなどをしていたのに、いきなり来なかった時の…
とてつもなく心配で、不安だったという経験が…



 それにしても、何故私はこんなに不安なんだろう。
明日はまた何時ものように、チャットが出来るかもしれないのに。今日だけ来ない可能性だってあるのに。
何故…私はkenを心配するんだ…



 たった一つの疑問に悩み、出ない答えに頭を抱えたまま、知らぬ間に眠りに落ちていた。