二人ぼっち


 柚夏の部屋には、一回だけ来たことがある。印象は、とても女の子らしい部屋ということ。男勝りな性格で口の悪い柚夏だけれど、ピンクと白を基調とした家具やベッド。枕元には何個かの縫いぐるみが置いてあり、所々にレースやフリルが散らばっている。
この前部屋を見た時は、部屋を開けた瞬間に柚夏は照れて、真っ赤な顔をしていったっけ…。今回は二度目なだけに、少しは抵抗しなくなったようだ。


 「適当に座ってー」
 「うん。じゃ、履歴書書こうか!」


 丸い机に向かい合って、私達はそれぞれ座った。
早速履歴書を取り出し、シャープペンシルで下書きとして書き始めた。学歴や職歴は難なく書けたのだが… 趣味や志望動機、特技が良く分からない。


 (んー…どうしたものか…)

 柚夏は真面目な顔して、履歴書と睨めっこしている。私は完全に行き詰ってしまった…。
心の中で趣味などを探してみる。これだ!ってものが無いと、本当にこういう時に困る。


 正直、私は平凡だ。何が出来るわけでも、劣っているわけでもない。
インターネットは趣味でも、特技でもない。私の居場所だ。この世界で親に邪魔者扱いされ、追い出された私が、唯一親に貰った別の世界。それがインターネット。
顔も、本当の性格も、本当の性別も、名前すらも分からない。嘘偽りが固められて出来た世界。
嘘の世界で、他人を汚したり事件を起こす人が居る。人の不幸を笑い、他人を嘲笑い、馬鹿にする人が居る。中傷なども絶える事はない。けれど、その世界が…私にとっての唯一の居場所。屑で良い。粕で良い。ただ、一人だけにでも私の存在を認められていたら良いのだ。


 「・・・い。玲衣!」

 耳元で大きな声を出した柚夏。驚いて、自分の世界から現実に戻った。
そして柚夏に返事をすると、何回も私の名前を呼んでいた事を言われた。

 「玲衣、何か考えてたみたいだけどどうしたの?」

 「ん?何でもないよ。それよりどうしたの?」

 「いや、履歴書終わったかなって。」

 「趣味とか分かんなくて行き詰っちゃったよ…」

 「そんなの適当に書きな!悩むだけ無駄だよ!」

 柚夏にそう言われ軽く考えると、色々浮かんできた。
適当に雰囲気をつける為、趣味には音楽鑑賞と。志望動機は説明書を参考にして書いた。

 下書きを書き終えたと同時に、柚夏が話しかけてきた。