『お父さんとお母さんだ! ありがとう、要ちゃん!』


『どういたしまして。じゃ、またね』


 “またね”といった彼の服を慌てて掴み、落としていた視線を上げる。


『絶対、絶対に、また会える!?』


『うん、絶対』


 別れ際までにこやかに微笑んでいた彼は、私の頭を撫でて去っていった。


『『紀紗!』』


 はっとして振り返れば、両親がほっとした顔でこちらに向かってくる。


『よくこの場所にこれたわね、紀紗。放送は聞こえた?』


『聞こえない! でも、要ちゃんがいたから!』


『要……? どんな人だったの?』


『あれ! 白い帽子のお兄ちゃん!』


 ずいぶんと遠くに行ってしまった要ちゃんを指差す。


『あれって……。佐藤さんのところの息子さんじゃなかったかしら……?』