歩いて10分くらいすると、私の家が見えるところまでくる。社長とはここでお別れだ。
「社長、ありがとうね。またね」
頭を撫でると、くるりと向きを変え、スタスタと去っていった。
社長と別れた角を曲がれば、私の家の前に見たことのない車が見えた。
不審に思い、足早に近付くと、母がその車の持ち主にエスコートされ車に乗っていった。
“浮気相手”か。そうわかると、その男を無意識に見てしまう。
じっと見ていると、男は車に乗る直前に私の存在に気付いたらしく、目が合ってしまった。
その男だけが悪くて母の浮気につながったわけではないけれど、男をガンつけてしまった。