「アス」は凄く素直な女の子だった。
吹奏楽部に所属していて、優しい子。
お互いに名前で呼びあったし、俺はその時間が幸せになった。
それに、アスはよく気づくんだ。
俺のことも本当は気づいてる。
本当に恋をしているのは、アスじゃないことに。
アスは優し過ぎるんだ。
それがなんだか空に似ていた。
「宙人君、本当はアスのこと恋人としての好きじゃないんだよね。」
「え」
アスは唐突に言った。しかし、険しい顔はけしてしない。
「アスはね、宙人君のこと好きだよ。宙人君の優しいところ。」
「俺だってアスが好きだよ」
「違うの。宙人君の好きは違う好きだよ。」
「アスが好きだ。」
「違う」
アスはそう言ったあと、真剣な瞳で俺を見た。

