「こちらのかき揚げで以上になりますが他にご注文はございますか?」

「最後に鯛を揚げてくれるかな」

「かしこまりました」

「‥‥…。」

「お父さん、そんなに召し上がってお身体にさわりますよ」

「そうよ!おじいちゃま『鯛の天婦羅』の食べ過ぎで『あの世行き』にでもなったらシャレにならないわ!」

「これ!勝美ちゃん口を慎みなさい」

江与おばさんが勝美お姉ちゃまをたしなめた。

「勝美の言ってる事は間違ってはいないよなぁー。
あっ、やっぱ俺も鯛の天婦羅下さい。」

揚げたてのかき揚げをフゥフゥしながら国君も追加をたのんだ。

その横で国君の奥さんのちゃーちゃんが眉を顰めている。

「殿、少し食べ過ぎでは…」
ちゃーちゃんが心配をするはず、国君は全ての天婦羅を皆の倍は食べていた。

「大丈夫。俺『若い』から。ちゃんと栄養とらないとね」

愛妻ちゃーちゃんの心配をよそに鯛の天婦羅にかぶりつく国君。

「おじいちゃまと国ちゃんを見てたら私も食べたくなっちゃったわ。
すみません〜私にも鯛をお願いします〜。勝美ちゃん達も頼めば?」

我が家の食いしん坊さん千恵美お姉ちゃまも追加を頼む。

ワインを飲んでいる勝美お姉ちゃまの眉間に皺がよった。

「ちょっと千恵美ちゃん食べ過ぎ!
ダイエット中じゃなの?」



「だって〜美味しいんだもん〜ダイエットは今日はお休みします」口を尖らして反論する千恵美お姉ちゃまの横から「勝美ちゃんは禁酒中じゃなかったかしら?」

澄まして食後のお茶を飲みながら玉美お姉ちゃまが助け船をだした。

「ゴホッゴホッ」
ワインを飲んでいた勝美お姉ちゃまが咽せた。

「ここっこれは法要のお清よ。特別…特別なの。そっそれにワイン飲むのも久しぶりだし…ね」

苦しい言い訳をする勝美お姉ちゃま。

「たしかにワインは久しぶりよね。ワインは」
玉美お姉ちゃまの口撃が続いている。

「だからあっちで飲んだのはお清でお酒であってお酒じゃないの!」

「お酒であってお酒じゃないのね…」

「あーもういいじゃない。あっちじゃワインは飲めなかったんだから!」

苛立ちながらワインを飲み続ける勝美お姉ちゃま。

「悪いが牛肉の天婦羅を揚げてもらえんかな。ここのところヘルシーというか質素な食事が続いてね。肉や脂に飢えていたんだ。」

誰か思えば秀おじさんだ。

「私はアスパラの素揚げをお願いしようかしら。」

秀おじさんはお肉をそして江与おばさんはアスパラにマヨネーズをたっぷりつけ美味しそうに食べている。

そこへこの店の女将が部屋に入ってきた。
「いつもご贔屓にそして本日は法要の席にご利用頂きありがとうございました。ところで本日はどなたの法要だったんでしょうか?」

「えっ?」「ゴホッ」「うっ」


肉、脂、アルコールと堪能していた口々が一瞬にして止まった。

女将としては他わいのない事を聞いたつもりだったがこちらとしては触れて欲しくない事だった。

何しろ…。
絶対に居るはずのない法要の『主役❓』が冒頭から『鯛の天婦羅』を注文しているんです。

はい。読者の皆様はお気づきかとおもいますが…
そうなんです。そうなんですよ!