撮影自体はすごく順調だったんだけど、最後の最後に父さんがアドリブを入れてきた。
すごい、しんみりしてる雰囲気の中、急に俺の胸ぐらを掴むという無茶なことを。
とっさに俺もアドリブに繋げたけど、下手したら丸崩れだったって。
監督にも、褒められたくらいだ。
「で、どうだった?」
「ん?」
「珠樹さん」
「やっぱすげーよ。次元が違うって感じた。俺の予想を遥かに上回った」
「珠樹さんみたいに、綾斗もなれそう?」
「俺は、ならない。俺は父さんとは違うし、父さんとは違う、すごい人物になる」
ーーそれが、父さんの望みでもあるから。
「綾斗、らしいね」
「そんなことねーよ…」
俺は俺の俳優人生を歩むって決めてるんだ。



