「じゃーねー!」
いつも通り、校門であゆみとバイバイするとどうしようもない気持ちに襲われる。
そんな分からない感情に知らん顔したくて気が付けば最近の家路に帰る足取りはものすごく速い。
あれ、あたし体育の成績、平均以下だったのに…。
「たーまきっ♪」
家まであとちょっと。
ってところでやたらご機嫌な声が聞こえた。
それだけでもやもやした感情が少しだけ晴れ渡る。
あの日から、あたしの世界は少しずつ変わって見える。
「俺、明日から修学旅行なんだー♪」
あたしの顔を覗き込んでにっこり笑う翔馬に「知ってるっての」って返す。
「お土産、何がいい?」
「いーって」
沖縄旅行でしょ?滅多に行けないんだからあたしなんかに気遣わなくていいからちゃんと楽しんで来てほしい。
「いいから。言ってみ?」
「…じゃあ、楽しかった思い出話」
そっぽを向いて答えるあたしに翔馬はぷはって笑った。