「翔馬、付いてるよ、ほらココ」
「ん?」
ハテナ顔の翔馬に鏡とティッシュを差し出した。
もうこれだけであたしの母性本能ってヤツが目覚める。
一生懸命鏡を見ながらソースを拭く翔馬に思わず可愛いと思った。
こんな人に思われる"彼女"は本当に絶対に幸せだろうな。
だって翔馬だよ?
すっごく優しい人なんだ。
ほんと、びっくりするくらい。
側に居ればきっとみんな好きになっちゃう。
不思議な人。
ねぇ、翔馬。
「もうすぐ始まるな」
翔馬があたしを見てくれる事はないのかな?
「…ね」
伝えたら、何かが変わるなんて事あるのかな?
「…っ…」
それも出来ない臆病なあたしにはそんな奇跡起こるはずもないのかな?
