ふわっと翔馬のいい香りが鼻をくすぐる。
遠慮がちにブレザーの端をつかむと勢いよくチャリが発進した。
翔馬はあたしの想いを知らない。
たぶん一生気付かれないと思う。
小さい頃は、好きになってほしいとか付き合いたいとか思ってたし、いずれはそうなるんじゃないかってバカみたいだけど本気で思った時期もあった。
それでも―『俺、運命の人に出逢ったんだよ』あの言葉を聞いた時、二度と会えないじゃんって安心してしまったあたしはきっと翔馬の恋愛対象外で。
10才だったあたしでもこの恋はきっと永遠に叶わないって痛いくらい分かってしまった。
あれ以来、翔馬が他の女の子の話をすることはなかったし何年たっても“もう会えない運命の女の子”を心のどこかで想っているの苦しいほど分かっているから。
