「まぁ、まだ苗字しか知らないんだけどね」
「そっかぁ」
それでも、こんな幸せそうな顔するあゆみの恋が叶うといいなって思う。
「珠稀はどーなのよっ?」
「へ?あたし?あたしは…ないなぁ」
ふいにまた翔馬の顔を思い浮かべる。
どうにもならないくらい苦しくなる。
そんな心を誤魔化すように夏の雲から視線を逸らした。
「翔馬センパイは〜?」
「…翔馬とあたしはただの幼馴染みだもん」
"翔馬"と言うだけで胸が痛くなる。
相当あたしやばいな。
「――嘘」
「え?…ってちょっ」
ぴしゃり、と顔にプールの水がかかる。
じりじり焦げたような顔をほんの一瞬冷ましてくれた。
「珠稀、今、翔馬センパイが好きで好きでたまらないって顔してるよ」
ほんの一瞬の冷たさはすぐに消えて。
