きっとあたしの考え過ぎだね。
もう、大丈夫。
「…珠稀、俺さ、」
「うん?」
安心で満たされた心を破るように翔馬は綺麗な唇で言葉を発した。
「俺さ、好きな子ができたんだ」
……雨の音が聞こえなくなった。
あたしは相づちを打つ事も、瞬きする事も、息をする事も忘れていた。
確実なのはただ、その相手があたしじゃないって事だけで。
大げさかもしれないけど、ほんの一瞬であたしの全てが終わってしまった気さえした。
目の前が真っ暗になって自分が立っているのも不思議なくらい、力が抜けた。
まるで幼かったあの頃と同じように―。
「覚えてる?昔、俺に絆創膏くれた女の子」
――覚えてるよ。忘れるわけないじゃん
翔馬の"運命の人"なんだから。
伝えたいのに上手く口が開かなくて、言葉にならない。
「その子多分、あの時の子なんだよな」
翔馬の声に初めて耳を塞ぎたくなってしまった。
