昔から豪太と喧嘩したあとは淋しかった。
切なくなった。
仲直りすると、ホッとして豪太の胸で泣きたくなった。
「島田さんてあの人だろ?」
豪太がカップボードの上の写真を見つけ、寝そべりながら指差した。
「うん。そうだよ」
秋菜は素っ気なく答えた。
「お似合いの2人だな」
「そうお?…」
秋菜が反論しかけた時。
カチャリとドアノブの回る音がして
由紀恵が部屋に入ってきた。
「もう柊、寝たの?」
秋菜の問いに由紀恵は笑顔を見せた。
「もう寝たわ。絵本を読んであげたら、
もっと読んでってせがまれたわ。
本が好きなのね」
「そう。大好きなの。
あ、ママ、先にお風呂入ったら?」
秋菜は体を起こし、何気なく部屋の戸口に立っている由紀恵の顔を見る。
すると由紀恵は今まで見たことのないような思いつめた表情をしていた。
何かが起きた…
秋菜がそう思った次の瞬間、由紀恵の少し開いた唇から言葉が出た。
「…秋菜ちゃんと豪太くんに大事な話があるんだけど、いい?」
秋菜の中で胸騒ぎがする。
「…何?」
豪太が秋菜の方を向き、二人は顔を見合わせた。
少し蒸し暑い夜だった。
夜9時を過ぎたが、大事な家族の話し合いだ。
テレビを消すと、団地の4階にあるこの家のキッチンの開いた小窓からでも、よく虫の音が聞こえてくる。
由紀恵が豪太にクーラーつける?と訊き、豪太は、いや、いらない、と答えた。
「喉乾いちゃう……」
由紀恵は独り言を言って立ち上がり、冷蔵庫から麦茶を取りだして、三人分グラスに次いだ。
四人掛けの食卓テーブルに秋菜と豪太が並んで座り、豪太の前に由紀恵が座った。
改めて、三人がテーブルを挟んで向かい合う。
豪太は腕組みをし、脚を組む。

