脱衣所に入り、服を脱いで、
ショーツ1枚になる。


ふと、洗面所の鏡に映った自分の裸の胸を見て、秋菜はハッとした。


なんだか、胸の膨らみがしぼんだような気がした。


(嫌だあ…これじゃ、まな板に
干しぶどう乗せたみたいじゃない….)


母乳が出なくて、柊はミルクで育てた。


痩せたわけでもないのに、胸が小さくなるとはどういうことなのか。


(こんなの魅力ゼロだよ…)


秋菜は、手を両脇に添え、胸を身体の中央に寄せてみた。

こうすると胸に谷間が出来て、結構、バストがあるように見える。


(これ、いい……)

嬉しくなり、そのまま、両の手のひらで胸を包み込むようにして、クルクルと動かしてみた。


こうしていると大きくなるような気がする。
夢中でクルクルした。


「秋菜あ…」


後ろから、ふいに豪太の声がした。


「わっ!」


秋菜はびっくりして、慌てて脱衣所にあったバスタオルで胸を隠した。


「…1人でしてんの?」


なぜか豪太は気の毒そうな顔をした。


高校生の時、『女の人でも、欲求不満になると1人でするんだよ』と豪太が教えてくれた。


「ち違うの!これは違うの!」


誤解されたくなくて、秋菜は真っ赤になる。


「なんか胸が小さくなった気がして。
マッサージすれば、大きくなるかなって思って。本当よ。ねっ?
大きくなるかもしれないでしょ?」


必死になればなるほど、顔が赤くなる。


豪太はふんふん、と細かくうなづいた。


「じゃ、ちょっと俺に見せてみな」


そう言って豪太は、闘牛士がマントを振るように、バッと勢いよく秋菜の胸のバスタオルを奪い取った。