「秋菜!風呂から上がったら、
北海道プレミアム飲もうぜ!」


由紀恵からいい返事が来ると決まったわけでもないのに。

機嫌よく言いながら、豪太は浴槽に手をかけ、勢いよくざばりと浴槽から立ち上がった。





次の日、秋菜が電話でその話をすると
案の定、由紀恵の反応は鈍かった。


「うーん。そうねえ。ちょっと考えさせて」
と言って、電話を切った。



「やっぱりダメそうだよ。
あの人、なんでも『島田さん』だから。すごく依存してるし」


夜、秋菜は仕事から帰った豪太に報告した。


「そっかあ…」


秋菜の作った晩御飯のオムライスを食べながら、豪太は残念そうな顔をした。

それでも、予想通りの結果だ。

豪太も次の瞬間には、そんなことは忘れたように「明後日の休みの日、靴買いたいから、アウトレットに行こう」と秋菜に提案してきた。




ところが、次の日の夜。

由紀恵から掛かってきた電話の内容に秋菜は絶句した。


その話を豪太にすると豪太も同じようにびっくりしていた。



「えっ…マジ?」


着替えのTシャツを被りながら、豪太は目を見開いた。


「そうなの!」


秋菜は膨れっ面を作り、豪太に由紀恵からの電話の内容を話し始めた。



ーー秋菜ちゃん。
昨日の話だけどね……



秋菜は、柊を寝かしつけながら、一緒に眠ってしまい、半分寝ぼけていたから、一瞬なんのことかわからなかった。



ーーえと、ゴメン、なんだっけ?



ーー私がそっちに行く話よ。

あのね、今日、島田さんに相談したら、彼が自分のうちを二世帯住宅に改築して、私達と秋菜ちゃんと豪太くんと柊ちゃんと皆で住まないかって言うの。

そうしたら、いいんじゃないかって。
島田さんのうちはお庭もあるし、柊ちゃんにもいいと思うの。
…どうかしら?



「本当、とんでもないよ。バカな事言わないでって、すぐに電話切ったよ!」



「それは、驚きだね……」


豪太は腕組みをして、天井を見上げた。