時計の針の行方

「は?なんの冗談だよ」


「俺はぶち切れた」

そう言う上江田の表情は、切れてる様子はなく、いつものような穏やかな顔つきだった。

「1‐5‐4のフォーメーションでいく」


………
なんの冗談だよ。

「なあ、たかが一点だぜ?そのうちチャンスは回ってくるだろ」

上江田は、こちらを振り向いて真剣な顔つきで言った。
「チャンスは自分から作るものなんだ」と。

オシム語録ならず上江田語録。
その歴史に、新たなる言葉が刻まれた。
満足そうに自分の言葉に浸っている上江田に、ハヤトは冷静な反論をする。

「いや、DF一人はキツいだろ。そもそも、そんなことしたら相手にもチャンスが増えるぞ」

「大丈夫だ」

「なにが大丈夫なんだよ」



「お前の運動能力に賭ける」