しかし、ハヤトは素直に喜べなかった。
どんなに成績が良かろうが、
2ヶ月で消える運命は変わらない。


………
ホントに、くっだらねえ能力だな…


しかし、ハヤトは美空を恨む気は更々なかった。
2ヶ月で消えないにしろ、自分はいずれ死ぬ。

死んだときに時間が止まってしまうのならば……
迷惑を掛けない為にも、2ヶ月後に消えてしまったほうがいい。
ハヤトはそのような思いも抱いていた。


ただ、今はまだ割り切れていなかった。
消えてしまう自分。
消えたほうが世界の為になると分かっていても、まだこの世に未練があった。


上江田は、先ほどから黙って、暗い表情をしているハヤトを心配したのか、ハヤトに声を掛けた。

「どうした?成績が上がったのに嬉しくないのか?」

上江田は心底、ハヤトを心配していた。
ここまで元気がないハヤトも、長年過ごしてきて滅多にないことだったからだ。

上江田の優しい問い掛けにハヤトは、「ああ、ちょっと疲れただけだ」と、はぐらかし教室へ向かって歩きだした。