「700万なんて‥。
そんな大金‥「いいから、用意して」
「あなた‥。
‥‥わかりました。
用意します」

私は何も言わずに病室を出た。

――「ずっと兄ちゃんの病室にいる」
「帰ろう」
さっきからこのやりとりが繰り返されている。

「帰らない。
兄ちゃんといる」
「‥わがまま言うな!!!
椿が帰らなかったら他の組の奴らも怪しむだろうが」
「兄ちゃんは、私が守るから大丈夫」
「餓鬼が何言ってんだ。
帰るぞ」
「嫌!!!」

――バキッ
音とともに頬に痛みがはしった。
清二が私をぶったのだ。

「いい加減にしろ」
「‥‥。」
「椿は家に帰って今までどうり生活しろ。
学校にもちゃんと行くんだ。
優は、それを望んでるんじゃないのか」

兄ちゃんの名前が出ただけで、従ってしまうのは、自分でもおかしいと思う。
清二は、本当の事を言ってるのか、嘘をついて言ってるのかわからない。
でも、兄ちゃんが望む事をしたら、目が覚めるなら――。
兄ちゃんが望んでいる事は、なんでもするよ。
清二が言った事が嘘でも。
小さな希望をかかえて。