兄ちゃん‥私はまた、母さんのときみたいに守れなかったんだね。
お願いだから、目を覚ましてよ‥。

兄ちゃんに歩み寄って、そっと傷に触れる。
「‥痛そう」

頬を伝う涙をぬぐうと、静かに病室を出た。
少し歩くと、清二が壁に背をあずけて、座っている姿が見えた。

「清二」
清二はユックリ立ち上がって、今にも壊れそうに笑う。
「どうした?」
「トラックの‥運転手は?」
「‥501号室にいるよ」

兄ちゃん、なんで兄ちゃんは寝たままなんだろうね。
きっと、トラックを運転してた奴のせいだよね。

――コンコン
501とかかれた札のドアをノックする。
「はい」
女の人の声がきこえた。
少し、高い声。

そっとドアを開ける。
「‥あなたは?」
父さんよりは年上であろう女。
その側には、頭に包帯を巻いてる男。

「‥星野優の、妹です」
私がそう言うと、2人は目を泳がせた。
「‥私の事は、知っていますか」
「ヤ‥クザの‥。」
「はい。
5日、日にちをあげましょう。
700万用意してください。
用意してくれれば、あなた達のことは殺さない。
許してあげます」
拳をギュッと握る。

本当は、許したくない。
でも、なんだかこの人達は、殺しちゃいけない気がするんだ。

私は、ヤクザらしい事をしただけ。