――ピンポーン

安井とかかれた表札を見て、インターホンを鳴らした。
もちろん慶が。
私は慶の一歩後ろにいる。

「はぁーい」
出て来たのは中学2年生の娘。
慶、あんたはどうすんの?

「お父さん、いる?」
「いるけど‥お兄さん誰?」
慶、ここで殺しなよ。
心で言うものの、慶には届かない。

「お兄さん達は、ヤクザ」
ニコッと笑って銃を取り出した慶。
「キャーー」 パン
頭を打ち抜いた。

「どうした」
安井と、その奥さんがリビングの方から走ってきた。

「私、兄ちゃんの方殺して来る」
「‥わかった」
ノンビリ上がる私。

1つ、1つドアを開ける。
「あ゙? 誰だお前」
「殺人鬼」
――パン バタン
「なーんちゃって」
小さくつぶやいて、下におりる。
そこには、少し頬を血で染めた慶が、1人立っていた。

「‥無傷?」
「‥‥‥あ、あぁ」
こっちを向いて力無く笑う。

「椿、俺‥‥。」
「当たり前の事なんだよ。
ヤクザが人を殺すのは」
どんな顔で言ったかわからない。
でも、慶は安井の奥さんを見て、悲しそうな顔をしていた。

奥さんをよく見ると、少し、お腹が膨らんでいた。
「赤ちゃん‥いたんだね」
「‥うん」
父さんは、知っていたのだろうか。
安井の奥さんに、赤ちゃんがいることを―――。