気が付けば、明日から夏休み。

「―――では、楽しい夏休みを。」
それを合図に、皆は席を立って次々出て行く。

夏休み、か。
ヤクザに夏休みってあんのか?
疑問をだきつつ、私も教室を出た。

――「ただいま」
「おかえり。
慶が、組長の所に凄い顔して行ってたぞ。」
笑いながら喋る組員。

「慌ただしい奴」
私はさほど気にもとめずに自分の部屋に行って着替える。
着替えた後は、父さんの所に行く。

「ただいま、父さん。」
父さんの前には慶が座っていた。
そういえば、凄い顔して組長の所行ったって組員が言ってたな。

「1つ気になる事があるんだけど」
「どした?」
「ヤクザに夏休みってあんの?」
そう言うと、父さんは声を上げて笑った。

「慶も、それきいてきたんだよ」
ひーひー言って、目に涙をためながら父さんはそう口にした。
「なにがそんなに面白いのかわかんないんだけど」
私の声は‥届いてないみたいだった。

「で、あんの?」
「まぁ、仕事がないときは休みだよな、うん。
椿は結構レベル高いから基本休みないかもしんねーな。
夏休みでいるからこそ、やってもらいたい事あるしな。
慶はだいたい休みだな。
女や子供殺せないようじゃ、する仕事限られてくるからな。」
「ふーん。
ま、私は仕事好きだから」

慶を見ると、どんよりしていた。
きっと、俺はヤクザなのになにも出来てない。そう思っている。

「お、俺だって‥女や子供の1人くらい殺せますよ」
「そうか。
じゃ、近々頼むよ」
父さんはそう言って笑う。

「じゃ、私部屋戻るから」

駄目だ、あいつにはまだ出来ない。
ためらってるうちに殺されそうだ。

「まだまだ餓鬼」
そうつぶやいて、小さいため息をこぼした。