人形

｢こっち｣
慶の腕を引っ張る女の子。

リビングに入ると、女の子のお父さんとお母さんは私達を見ると固まった。

｢誰？ この子達｣
女の子のお母さんがきく。
｢パパのお友達。 ね？｣
私達に同意を求めてくる。
｢うん、そうだよ｣
私は笑顔でそう答えた。

｢あなた、こんな若い子達が友達にいたの？｣
｢‥いや、知らないぞ？｣
｢え？ じゃ、誰？｣
大人２人は再び固まった。

｢動かないでください。
子供の前で、銃は出したくない｣
私がそう言うと、２人の顔はみるみるうちに青くなった。

｢初めまして。
山本組の星野椿です。
こっちは相棒の桃山慶｣
女の子と話していたときの笑顔は、もう私には跡形もない。

｢私達はあなた達を危めるつもりはありませんので、ご安心を。
‥‥娘さん、名前なんていうんですか？｣
｢綾乃‥‥です｣
声は震えて、カスカスだった。

｢綾乃ちゃん、おいで｣
笑顔で手招きをする私。
こっちに向かって来る、綾乃ちゃん。

｢慶｣
名前を呼ぶと、何をするべきかわかったみたいで、綾乃のちゃんを抱き上げた。
｢綾乃ちゃん。
少しお兄ちゃんとお話してて。
お姉ちゃんとお父さん達は大切な話があるから｣
｢‥わかった｣
｢綾乃ちゃんは、いい子だね｣

私は２人に顔を戻した。
慶は、綾乃ちゃんと、どこか違う部屋に向かった。