[珍しいな、椿から電話よこすなんて]
どこか嬉しそうな声の兄貴。
自然に、兄貴に電話をかけていた。

「あに‥き。
母さんが‥母さんが、死ん‥でる」
泣きながら話す私。
[‥今すぐ行く]
どこか冷静な兄貴。

それから3時間後だ、兄貴が来たのは。
普通なら父さん所からは5時間かかる。

兄貴は、冷静ではない。
妹の私には、冷静をよそおってるだけ。
そう知った。

兄貴は、母さんに近付いて、そっと目に手をおいた。
兄貴の手が母さんの目から離れたとき、母さんの目は閉じられていた。

「あに‥き。
ごめ‥。ごめ‥ん」
泣きじゃくる私を、兄貴は抱きしめた。
兄貴の手は、震えていた。

――次の日。
私は知った。
母さんが亡くなったのは、7時30分。

私が、兄貴のいうことをきいて7時に帰ってれば、母さんは死なずにすんだかもしれない。

そして、もう1つ知った事。
母さんを殺したのは、山本組の組員。

山本組は、私の第2の家族だった。
本当に信じてた人達。

私は、それから人が信じれなくなったんだ。

――「私はあの日から人が変わった。
父さん、兄ちゃん以外の人間は信じなくなった。
いや、信じれなくなった。
そして、兄貴と呼んでいたのを、兄ちゃんと呼ぶようになった。
兄ちゃんには、逆らわなくなった。
きちんと、ゆうことをきくようになった。」

「‥もう、組員の事は信じれるのか?」
「まぁね」
ついこないだからだけどね。