――「椿」
突然きこえてきた声。

ああ、大好きな兄ちゃんだ。
とか思ってた。

兄ちゃんの車に乗る。

携帯で時計を確認すると20時をまわっていた。

「兄ちゃんが迎えに来るなんて珍しいよね。」
「‥父さんがまだ帰ってねぇって言ってたから、父さん所行くついでに‥な。」
「そっか。
どう? 兄ちゃん。大学は」

私はズット窓の外を見ていたが、兄ちゃんを見る。

「つまんねぇよ」
笑いながら答える。

「そっか。」
まぁ、高校だってつまんないし。
まず勉強がね。

「あれ?」
そう言って車を止め、バックする兄ちゃん。
公園の前までバックすると、車から降りた。

「兄ちゃん?」
車から降りた兄ちゃんを追い掛ける。

「‥誰、こいつ。」
公園の真ん中で倒れている男。
その男を兄ちゃんは抱えて車の方に歩いて行く。

「‥連れて帰るの?」
ま、まじかよ。
車の後ろに男を寝かせる。
よく見るとこの男は傷だらけだ。