それから教室に戻り、珍しく黒板を眺めていた。
先生は自己満足のように、ただ1人話して、黒板に文字を書いていく。

教室は少し煩い。
机に伏せて寝ている奴もいれば、友達と喋る奴もいる。
雑誌を見ている奴もいるし、携帯をいじってる奴もいる。
とても授業中とは思えない。

でも、このクラスはまだいい方かもしれない。
他のクラスは、誰もいなかったり、いたとおもえば数人しかいなかったり。
教室で乱闘がおきたりしている。
さすが荒れてる学校だけある。

1人、そんな事を思っていた。

「あ、そうそう。
池沢君さ、お父さんいないんだって。
なんか、亡くなったって。
事故死だったらしいよ」
そんな声がきこえてきた。
私は、そいつらの声に耳をすます。

「いつ亡くなったの?」
「んっとねー、4年前くらい」

4年前。
小学生のときだ。
どんな思いで、父親の死体を見たんだろう。
どんな思いで、葬式に出たんだろう。

なんて考えていると、教室のドアが開いた。