【中編】桜咲く季節に


「あ…あの…怒っていらっしゃるのでしたら謝りますわ。
でもわたくし迷惑ばかりかけていますし、翔やお母さんの負担になっていますもの。
それに翔だっていずれ結婚するのに…わたくしが同居していては相手の方に申し訳ないですわ」

「はあ? 何を訳のわからんことを…俺が結婚って何だよそれ?」

「あっ…翔には好きな方いらっしゃいませんの?
恋人とか…。いずれ人生を共にするお相手は?」

「いねーよ、そんなもん。
それより言葉、戻ってんぞ。
ったく、何をどうしたらそういう考えになるんだ?」

「あの…昨日観たDVDで、色々考えさせられて…」

「はぁ? DVD?」

 暫く何かを思い出すように考えていた翔は、大きなため息と共にガックリと肩を落として脱力した。

「あー、ああ、アレね。なるほど…。
たしかイケメン主人公の許へ親戚の娘が転がりこんできた事が切っ掛けで、恋人とすれ違ってしまうとかいう恋愛ものだったよなぁ。
おふくろがお薦めだっつーからレンタルしてきたヤツだろ?
で、お前はその内容に自分の置かれた状況を重ねたって事か。
ったく、お前に今時の女の子の話し方を勉強させようと思ってレンタルしてきたのに、勉強するとこ違うっつーの」

翔は苦笑してさくらの頭を撫でた。