その日翔が仕事から帰ってくると、さくらが誰かと話していた。
美羽と話しているのだろうと何気なく会話を聞きながら靴を脱いでいると、「大丈夫か」と心配している様子が窺えた。
もしかして母の具合が悪くなったのかと、大急ぎで居間へ行くと美羽はソファに突っ伏していた。
「おふくろ、どうした。大丈夫か?」
真っ青になって母親を抱き起こす翔。
だが、美羽は涙を一杯に溜めた瞳で翔を見上げると、肩を震わせ脱衣所を指差した。
その様子は明らかに元気そうで、どうみても笑いを堪えているようにしか見えない。怪訝に思っていると、脱衣所からさくらの声が聞こえてきた。
「大丈夫ですかー? 元気出してください」
「さくら? あいつ何をやっているんだ?」
「クククッ…見てくれば分かるわよ。もう、私可笑しくて…死にそうッ・・・ブブブッ」
クッションに顔を埋め、堪えきれない笑いを吸収させる母に呆れながら、そっと脱衣所のカーテンの隙間から覗き見る。
そこには……
洗濯機に顔を突っ込んでいるさくらがいた。



