美羽にさくらを紹介した後、翔は喉が渇いただろうと『教育』の為に買った少々へこんだ缶ジュースをさくらに手渡した。だが彼女はそれを見つめたまま動かなくなってしまったのだ。
お嬢様の常識では缶に直接口をつける事に戸惑いを感じるのかもしれないと思った翔は、さくらの為にグラスを用意し、自分は手にした缶のプルトップを開け直接口をつけた。
それを見て 信じられないといった表情のさくらに、そこまでに驚くことなのか?と思ったが、お嬢様の彼女にはあり得ない事なのかもしれないと、思いなおす。
だが、彼女が驚いたのはそこではなかった。
どうやら彼女はプルトップの開け方を知らず、缶きりで開けるものと本気で思っていたらしく、翔がもの凄い力で缶を抉じ開けたと勘違いしたらしいのだ。
流石の翔もその理由には、「世間知らずにも限度っつーもんがあるだろう?」と、呆れるを通り越し絶句した。
ここまでくれば常識なしもかなり筋金入りである。
このとき翔は瞬時に頭の中の『佐々木さくら専用社会人育成マニュアル』に『筋金は鋼《はがね》並み』と書き添えた。
そして、これは教育を通り越し調教の域になるだろう。
と、『打倒、鋼の筋金!』に闘志を燃やしたのだった。



