さくらを助けた翌日、翔は彼女の身の回りの品を揃える為、美羽に買い物に付き合ってもらった。
歯ブラシや箸などは男の自分でも選べるが、流石に下着や細かな女性用品を買うには抵抗があったからだ。
特に付き合いをしている彼女のいない翔にしてみれば、一番身近な女性である母を頼るのは自然な事だったのだが、美羽は誰かのために役に立てることが嬉しかったらしく、久しぶりに明るい笑顔を見せた。
元来、人の世話を焼くのが大好きな美羽は、それから毎日病院の様子を訊ねるようになり、さくらの身の回りの物を買ってきたり、彼女の為にお菓子を作るようになった。
長い間大好きだったお菓子作りからも遠ざかっていた母の良い変化を翔はとても喜んでいた。
それが功を奏したのか、美羽の体調はここ暫くの間すこぶる良かった。
さくらを助けたことで母親に回復の兆しが見える事になろうとは思っても見なかったが、まだ会ったことも無い彼女の今後の生活を心配するなど、さくらに対する気持ちは、実の母親のそれに近いものになっていたようだ。



