ニッコリと微笑み素直に従う従順な雛鳥。
見事な天然ぶりに前途は多難だなと、早速明日からの『佐々木さくら専用社会人育成マニュアル』を頭の中で組み立てにかかった。
自動販売機でジュース一つ買えない世間知らずの記憶喪失娘。
彼女が記憶喪失を装っているとしたら、役者並の演技力か相当の天然ボケだとしか思えない。
彼女との生活は、きっとハプニングの連続になるだろう。
きっと毎日がとんでもなく大変で、半端なく楽しいものになりそうだ。
「さあ、さくら。今日からここがお前の家だ」
期待と不安の入り混じったさくらの表情を見つめながら、翔は新しい生活が始まるドアを開いた。



