【中編】桜咲く季節に

だが翔を妬む者の中に、厄介な人物がいたのだ。

普段からたいした仕事も出来ないのに、人の業績を掠めていく事で社員から毛嫌いされている、社長の馬鹿息子だ。

彼は、翔が半年通いつめて契約に結びつけた仕事を、アッサリと自分の実績に摩り替えた。

どういうことかと問い詰めると逆切れし口論となり、さらには殴りかかってきたので、とっさに交わしたのは良かったのだが…。

その行為が裏目に出て、勢い余って無様に転んだ馬鹿息子は右肩を脱臼する怪我を負った。

誰が悪いかなど一目瞭然だった。

だが、息子が馬鹿になるのは、親が親バカだからというのが常である。

案の定、この社長も例外ではなく、右肩脱臼を一ヶ月の重症と言い張る息子の言葉を鵜呑みにした大馬鹿者だった。