院内に入ると、ツンと香る病院特有の臭い。
癌で4年前に亡くなった父親を思い出させるこの臭いが、翔は好きではなかった。
病院のエレベーター前で身体に痛々しい管を通した人を見かけ、その姿が父と重なる
。
未だに父の死の床に間に合わなかった後悔が尾を引いている翔にとって、病と闘う人の姿は深い傷となって疼くのだ。
同乗を避けるため階段で4階の病室へと向かった。
いつもの通り彼女の病室のドアの前で一呼吸置き、今日は何か思い出しているだろうか、と考える。
自分の身分を証明できるものを何一つ持っていなかった彼女は、未だに自分の名前すら思い出せず身元がわからない。
癌で4年前に亡くなった父親を思い出させるこの臭いが、翔は好きではなかった。
病院のエレベーター前で身体に痛々しい管を通した人を見かけ、その姿が父と重なる
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未だに父の死の床に間に合わなかった後悔が尾を引いている翔にとって、病と闘う人の姿は深い傷となって疼くのだ。
同乗を避けるため階段で4階の病室へと向かった。
いつもの通り彼女の病室のドアの前で一呼吸置き、今日は何か思い出しているだろうか、と考える。
自分の身分を証明できるものを何一つ持っていなかった彼女は、未だに自分の名前すら思い出せず身元がわからない。



