引き締まった身体に185cmの長身、雑誌から抜け出てきたモデルのような甘いマスクの彼に、木々までもが一瞬頬を染めたように花を降らせた。

春風に煽られ舞散る花びら。

柔らかな春の陽射しが、真新しいランドセルを担ぎ母親に手を引かれる子供たちを祝福している。

淡い桜色の霞が掛かった優しい風景に、緊張で強張った翔の表情がフッと緩んだ。

ここ数日の暖かな気候で、先週まで硬かった河川敷の桜の蕾も、一気に目覚めの時期を迎えている。

2~3日もすれば満開になりそうな予感に、高ぶった気持ちも少しずつ治まり心が浮き立つのを感じていた。

「出勤前にここへ寄って正解だったな」

ガチガチに緊張していた自分がなんだか可笑しくて、クスクス笑いながら一本の桜の下に座り込むと、頭上で揺れる枝を見つめた。