警察へ向かう間も 事故の状況を話している間も 何度も今朝の情景が浮かんでは消えていった。 舞い上がった花びら 儚く微笑み意識を失った桜の精 意識を失う直前の『帰さないで』という悲痛な声が何度も耳に木霊して離れない。 彼女の家族は、今ごろ事故の連絡を受けているのだろうか。 彼女を迎えに病院へ来ているのではないかと思うと胸が痛い。 『約束する…』と言ったのに…ごめんな… 自分に彼女との約束を守る権限など無い事に、翔は空しさを感じずにはいられなかった。