「おお、威勢がいいな。これは楽しみだ。大変だったな」

「え?」

「今朝の河川敷の事故で遅くなったんだろ?」

「え…っ? なんで…俺電話でそこまで話していないですよね?」

「俺は毎朝あの辺りを走っているんだよ。
ちょうど通りがかったとき、お前が女の人を抱えて救急車に同乗するところだったんだ。
見覚えのある顔だったから「おや?」って思ったんだよな。
見間違いかと思ったけど、河原におきっぱなしになっていたバイクにも覚えがあったんでな」

とりあえずクビではなさそうだとホッとして、少し表情が緩む。

緊張が解けドッ疲れが出て、勧められた椅子にへたり込むように座った。

思わず安堵の溜息が出る。

「はぁ…、そうなんですか。
良く覚えていましたねバイクの事」

「ああ、まあな。俺も好きだから。
しかしこんなに慌ててこなくても良かったんだぞ?
ゆっくり来いと言ってやろうとしたら携帯の電源が入ってないし。
連絡ぐらいつくようにしておけよ」