救急車で運ばれた彼女に付き添い、更にそのまま警察に事情を聞かれる事になった翔は、必然的に定刻に会社に行く事も出来ず、初出勤はすでに午後に近い時間となった。

その場に居合わせ一部始終を見ており、成り行きとはいえ彼女を助け病院まで一緒に行ったのだから、放り出して帰ることなど出来ないのは仕方が無い。

事故に巻き込まれ遅れるとだけ簡単に連絡してはおいたものの、初出勤でこれだけの大遅刻は痛いものがある。

詳しい調書はまた改めて警察に出向くと約束して開放してもらい、大急ぎで会社に行くとクビを覚悟してドアを開けた。

「本日より入社しました佐々木 翔です!
遅くなりまして申し訳ありませんでした」

緊張から声は裏返り、自分でも驚くほどの大声でそういうと、深々と頭を下げる。

40代後半のプロレスラーのような体格の大柄な社長は、翔の様子に一瞬驚いて、それから豪快に笑い出した。