翔に受け止められ、地面への激突は防げたが、車と接触して跳ね上げられた身体は、何処を強打しているかわからない。

頭を打っていたらそれこそ動かすのは危険だと判断した翔は、出来るだけ腕に抱えた女性に衝撃を与えぬよう抱きかかえたまま、その場に静かに座り込むと携帯を出して救急車を呼んだ。

女性は蒼白な顔で意識は虚ろだ。

翔の呼びかけも聞こえているのかハッキリしない。

ぼんやりと開かれた瞳は何も映さず空(くう)を見ていたが、その唇は何かを訴えるように小さく動いていた。

「おいあんた、今救急車を呼んだからな。しっかりしろよ?」

「……――助けて…」

弱々しい声とは裏腹に、驚くほどの力で翔の袖口を掴むと、必死に何かを伝えようとする彼女の口元に、耳を近づけて必死に聞き取った。