暖かな春風に煽られた薄桃色の可憐な花が、ハラハラと舞い河川敷を薄桃色に美しく染め上げる。

佐々木 翔はバイクで職場へ向かう途中、お気に入りの場所へと立ち寄った。

バイクを降りヘルメットを取ると、僅かに紫がかった癖のない黒髪がサラリと額に掛かる。
切れ長の涼しげな目元は筆でなぞった様な美しい二重。

水面に反射する光の加減で、漆黒から深い藍に変化するその瞳の色は、父方の祖父に外国の血が混ざっていた為の隔世遺伝と聞いている。

父が他界し、血縁が絶えた今となっては詳しいことは分からないが、翔はこの瞳の色が気に入っていた。

ヘルメットを小脇に抱えると、やや憂鬱な面立ちでいつもの場所へとゆっくりと歩き出す。