私とマイは、ポカーンっと口を開けて、目の前にある光景を眺めた。
な、な、なにこれ……。
なんなのこの、箱みたいな大きな乗り物。
多くの人間がその中に入っていく。
魔界では見たことも聞いたこともない。
これに乗って、学校に行くの?
響夏は困った顔をしながら、言った。
「あっちゃー……。困ったな。今日にかぎって、電車が混んでるよ」
「で、電車……と言うのか?この箱わ」
「ん?……あぁ。マキたちは、電車を見たことない?」
私はコクッとうなずいた。
その瞬間、強い視線を感じた。
あたりをキョロキョロとみまわす。
そして、不意に振り向くと宙が私を無表情で見ている。
「な、なによ、宙?」
「マキ姉さん。俺らはバスに乗ろうぜ?」
「ば、バス?」
宙は、私を引っ張ってのんびりと歩きはじめた。
「おっ、おい!ちょっと待てよ、宙!!」
後ろから、響夏の声がひびいた。