「マキ様」


「…ルルア?」


いつのまにかルルアは、私の隣にいて氷を詰めたハンカチを渡してくれた。


私はそれを見て笑って言った。


「私が初めて人間界に行ったとき。私、変な男たちに絡まれて怪我したの。そこを響夏が助けてくれて、傷口を冷やしてくれたの」


私はそのハンカチを目に当てつづける。


「そう、まさにこんなふうに。雪っていう白くて冷たいものをハンカチにつつんで冷やしてくれたの」


「マキ様…」


ルルアは心配そうに言った。


私の頬を涙が流れる。


私はその波を拭うこともせずに、話し続ける。


「別に多くのものを望んだわけじゃなかったの」

ただ、みんなと一緒にいたかっただけ。


産まれてから、今まで私が望んだものは多くなかった。


少なすぎるくらいだ。