私と響夏は後ろの人に順番をゆずり、私はようやく恐怖から解放される。

響夏はスキップでもするじゃないか?ってくらい機嫌良く私に言った。


「マキが怖がりとはねぇー」


私は顔を赤くさせて言った。


「うるさいなぁ!!私にだって苦手なことはあるの!!」


私はプイッとそっぽを向く。


響夏は私の手を握って言った。


「マキは他に何乗りたい?」


私は考えながらアトラクションの名前と写真が載ったパンフレットと睨めっこする。


響夏はそんな私を見てクスッと笑って言った。


「もう、俺が手を握っても怒らなくなったね」


私は響夏と自分の手がしっかり、つながっているのをチラッと確認して言った。


「私ね。誰かと手をつなぐのが好きなの」


響夏がポカーンとする。


私はパンフレットをしまって、歩きながら言った。


「手をつないでると、その人のことを近くに感じれるでしょう?私は不確かなことが大嫌いなの。だってもしかしたら、明日には響夏はいなくなるかもしれないじゃない?でもね、今こうやって手をつないでることは確かなことで、それは絶対に消えてなくなったりしない。だから好きなの」


響夏は首をかしげて言った。


「よく、わかんないけど。とにかく好きなんだな」


うん、好きなの。


私は空を見上げながら歩く。


少し空がオレンジ色になってきた。


今日の夕方にルルアが私を迎えに来る。


もうそろそろなんだな。


私はギュッと響夏の手を握る。


すると響夏も私の手を強く、でも優しく握る。


手を繋いでることは確かなこと。


でも、私が響夏に向けているこの気持ちは不確かなこと。


大丈夫、私は不確かなことが嫌いでしょ?


大丈夫。


まだ、私は響夏に出会う前の私にもどれる。